2020/12/09 First Release
2021/06/23 Updated
こんにちは!どこでもGOです!
先日、龍Q館の見学に行って来ました。
正式名称は、首都圏外郭放水路と言う、2002年から部分使用の始まった国土交通省の洪水防御施設です。「地下のパルテノン神殿」とか、「地下神殿」と呼ばれる所です。一度は訪れたい、荘厳な雰囲気の所でしたので紹介しちゃいます。
一言で言うと、台風など大雨が降った時に、中小河川の水かさが増し、洪水の恐れがある場合に、当該地域の水害を防ぐ為に、溢れた川水を一旦地下に掘った巨大な立坑に溜めておき、一級河川である江戸川に排水する事で決壊・洪水を未然に防ぐ為の施設です。
目 次
- 1. この施設が必要な理由
- 2. この施設の治水効果
- 3. 全体像 (メカニズム)
- 4. 龍Q館、名前の由来
- 5. 見学ツアーに参加
- 6. 中央オペレーションルームで全体を制御
- 7. 立坑に雨水を溜める
- 8. 調圧水槽(地下神殿)経由で排水
- 9. 江戸川への排出ポンプ
- 10. 地底探検ミュージアムでしくみを理解
1. この施設が必要な理由
この施設のある地域は春日部市の中川流域言われ、利根川・荒川・江戸川に囲まれた、地盤が低く、水が溜まりやすい「皿」のような地形になっています。さらに、近隣に中小河川(中川、倉松川、大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)、18号水路、幸松川の5河川)も流れています。なので、昔から浸水被害に悩まされてきました。
中川の勾配は非常にゆるやかなので、低い方向へ流れる速度が遅く、大雨に見舞われるとすぐには水位は下がらず、たびたび洪水にあってきました。
2. この施設の治水効果
この施設は2002年に一部の利用が始まり、立坑を徐々に増やしていき、第5立坑で完成をみました。2020年12月までで85回の洪水調節を実施、数字の上でも大幅に浸水面積を減らしている実績があります。
下記のグラフ(2000年、2004年、2006年を抽出)を見れば、雨量はほとんど変わらないのに、浸水面積、浸水戸数が激減しているのがよくわかると思います。人知れず、大活躍してくれている事に感謝!
3. 全体像 (メカニズム)
立坑は全部で5本、つまり第2~5立坑で近隣河川から溢れ出た川水を溜め込みます。
第1立坑及び第2~5立坑は地下50mにある直径10mの連絡水路(地下トンネル、地下の川)によりつながっており、第1立坑経由で、調圧水槽に流され、さらに、ポンプで江戸川に排水されます。
連絡水路はシールド工法によって作られました。つまり、地下50mの所でシールドマシンが少しずつ掘り進み、進んだ所から「セグメント」と呼ばれる円筒状のセメントの壁を作っていく工法です。
全体のコントロールは龍Q館にある、中央オペレーションルームで行っています。
4. 龍Q館、名前の由来
龍Q館とは、変わった名前ですね。
地域住民による公募でこの愛称が決まりました。春日部地域には昔から火伏の龍の伝説(江戸時代、旅のお坊さんからもらった不思議なお札が、西宝珠花(にしほうしゅばな)の米問屋を救う話)があります。それと、水害を防ぐ水=AQUAの「Q」から決まりました。
水害を防ぐ立坑・調圧水槽・ポンプなどの施設と、しくみを学べるミュージアムである龍Q館からなっています。話す時には施設全体を龍Q館と呼ぶ場合もあります。
5. 見学ツアーに参加
この施設を見学するには、予約が必要な見学ツアーに参加する必要があります。この記事の最後にオフィシャルHPのURLを付けておくので、そこから可能です。
見学コースはバリアフリーではなく、すき間が多い通路、階段120段ぐらいの上り下りがあるので、ハイヒールは不可、スニーカー推奨です。また、何かあっても責任取らないよという、同意書にサインが必要です。
見学ツアーは3コース設定されています。
- 迫力満点!立坑体験コース
- 深部を探る!ポンプ堪能コース
- 気軽に参加できる!地下神殿コース
下に比較表を付けましたので、検討して下さい。
お勧めは、今回私が参加した立坑体験コースです。
このコースは地下神殿と呼ばれている調圧水槽はもちろん、加えて巨大な第1立坑が見学できます。ちなみに、第2~5立坑の見学はできません。この第1立坑の最上部にある、まわりを一周できる作業用通路(キャットウォーク)を歩きながら、立坑をまじまじと見れちゃいます。また、立坑内の縦の方向(底の方向)の作業用階段を途中まで下りられます。そこからは、地下神殿が違った角度から見る事ができます。
キャットウォークを歩くので、ヘルメットとハーネスを着用します。ヘルメット・ハーネスなどは貸してくれますので、個人で必要な装備はありません。
撮影は危険な所、階段途中など一部禁止区域はありますが、基本的に動画・静止画共に可能です。また、よほど危険な状態でない限り、雨天直後の雨水が溜まっている状態であっても、立坑の見学は可能です。(なので、マニアが来ているそうです。)
調圧水槽(地下神殿)は雨水が溜まっていると、見学できません。見学料金は現地にて支払います。土日曜日は数週間前には埋まりますが、平日は比較的空いています。お勧めの、立坑体験コースは開催日が限られていますので要チェックです。
6. 中央オペレーションルームで全体を制御
龍Q館3Fにあって、全ての立坑、排水施設、調圧水槽、管理対象の河川の状況など、全てを集中管理する部屋です。平時はほとんど使用されていないので、TVや映画の撮影場所として使用される事があります。有事には、刻一刻と変化する雨量、水量、水位を見ながら、貯水のタイミング、江戸川への排水タイミング・量を調整します。
7. 立坑に雨水を溜める
全長6.3kmに渡って設置された第1~5立坑。第2~5立坑は、近隣の中小河川からあふれた川水を溜めておく巨大な立筒です。第1立坑は、第2~5立坑から地下トンネル(地下の川)を通じて流れてくる水を受け入れ、調圧水槽につなぐ為の特別坑です。
大きさは深さ70m、内径30m(第5立坑のみ15m)の巨大な立筒です。なんと、浅草寺五重塔やスペースシャトルがすっぽりはいる大きさです。近隣河川には「越流堤」があり、大雨などで河川の水位が上昇し、「越流堤」の高さを超えると立坑に流れ込むしくみになっています。
8. 調圧水槽(地下神殿)経由で排水
調圧水槽が、地下神殿と呼ばれている所です。地下22mの所に作られた、長さ177m、幅78m、高さ18mにおよぶ巨大水槽です。例えると、サッカー場一面の広さがあります。容量で言うと、67万㎥です。
ここに、天井を支える為に、長さ7m、幅2m、高さ18m、重さ500tの柱が59本設置されているので、まさに荘厳な地下神殿、異次元空間の雰囲気が漂います。
この水槽の役割は主に下記の3つです。
- 第2~5立坑から地下トンネル経由で流れ、第1立坑経由で流入してきた水勢を弱める
- 江戸川にスムースに水を流す為、ポンプの安定稼働の為
- 万が一江戸川から逆流が来た時の調整
床に汚泥の堆積はなく、においもしません。汚泥に関しては、あまり堆積しない構造になっているのでさほど清掃は必要ないとの事です。でも、年に数回は人海戦術による床面の清掃は実施されるとの事です。においに関しても、始めから自然換気できるように設計されているので、においません。
9. 江戸川への排出ポンプ
調圧水槽に溜まった水を江戸川に流す為に、巨大な4台のポンプが龍Q館に設置されています。ポンプ1台当たり、50㎥/秒の排水能力があります。最大では、ポンプ4台で200㎥/秒の能力、これは、25mプール1杯分の量なので、日本最大級の能力です。
動力は航空機用に開発されたガスタービン(A重油使用)を改造したもので、騒音・振動を低減しています。調圧水槽いっぱいに溜まった水を約1時間で排出できる能力です。
10. 地底探検ミュージアムでしくみを理解
龍Q館内にある施設で、首都圏外郭放水路の機能・役割、江戸川に関する防災事業・自然環境に関する説明・資料があります。見学コース参加の少し前に来て、事前に見ておくと理解がすすみます。所要時間は30分ぐらいです。
地底体感ホールは、立坑を模した円筒形の空間で、人々を洪水から守ってくれる首都圏外郭放水路の活躍を、光、音、映像でバーチャル体験できる施設ですが、新型コロナウイルス対策で現在は中止されています。
●じゃらん
近隣の宿泊施設の紹介があります。近い所では、パレスホテル大宮があります。
検索方法:「宿名・キーワードから探す」に「首都圏外郭放水路」で検索
【じゃらん】国内25,000軒の宿をネットで予約OK!2%ポイント還元!
首都圏外郭放水路だけでなく、有間ダム・荒川ロックゲート(扇橋閘門)・大谷資料館を含んだ日帰りツアーがあります。今、バスツアーは何たって安いのはもちろん、2席が1名で使用できるなど、非常に快適に過ごせますので、是非!
検索方法:始めの画面で、1画面分ぐらい下がると、検索画面があります。「さらに条件を追加する+」をクリックして、「キーワード検索(観光地等)」に「首都圏外郭放水路」で検索
●首都圏外郭放水路 オフィシャルHP
https://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/gaikaku/
https://www.youtube.com/watch?v=hyQP6AT8ZyQ
●CNN News:How giant tunnels protect Tokyo from flood threat 2012/11/01
世界的にみても類を見ない程大規模な施設なので、CNNニュースで全世界に発信されています
https://edition.cnn.com/2012/10/31/world/asia/japan-flood-tunnel/index.html